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"The Lost Picture Show" [科学と技術一般]

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映画を見ない私は知りませんが,The Last Picture Show(邦題:ラスト・ショー)という映画をもじったタイトルの記事が,IEEEの「スペクトラム」誌の5月17日号に載っています。"Hollywood's Digital Problem"とカバー・ストーリーになっています。

 
  Photo: USC Shoah Foundation
Archive Bot:南カリフォルニア大学(USC)では,USC Shoah財団からの約54,000人のホロコースト生存者のインタビュー,ワーナーブラザーズの8,000の長編映画と5,000のテレビ番組を含む約50ペタバイトのアーカイブデータを含む磁気テープを継続的に自動検査している。
現在の映画はデジタルになっています。きれいな画質や編集の簡単さなど,良い事づくめの様に見えますが,実はある深刻な問題を抱えているのです。

それはデジタルデータの保管の問題です。デジタル映画はLTOというデジタルテープ規格になっているそうです。保存方法として1990年代終わりにはすぐれた解決策だったわけです。初代LTOが一巻非圧縮で100GBだったものが,最新のLTO-7では圧縮15TBになっています。デジタルテープそのものの寿命は30年~50年は持つと言われているようで,冷乾状態で100年以上持つ映画フィルムよりは短いですがかなり良いです。むしろそれ以上の問題ははるかに短期間で起こる規格の陳腐化です。半導体のムーアの法則のように7世代のフォーマットが,18年間に出現していますが,2世代前までの規格しか互換性が保証されていません。LTO-8の装置ではLTO‐5以前のテープは読めなくなるのです。大事な作品を保管して再生できる状態にしておくためには,常に何百万ドルも掛けて新しいフォーマットに移し替え続けなければならないのです。

私たち個人レベルでもデジタルデータの保管の問題を抱えているのは共通です。フロッピーやDAT,DVのテープなどは掛けられる装置がもうあまりありません。MDもしかり。デジタルが扱いやすく便利なのはホンの短期間でのことで,それ以前のフィルムやら紙の書籍やらアナログ媒体の方が,保存性は良いのです。

いわば,デジタルデータは砂上の楼閣のようなものです。デジタルで新たに記録されるものはもちろん,保管してあったアナログ媒体をデジタルに変換したとたんその問題は発生します。記事にある南カルフォルニア大の映画アーケビストのディノ・エベレット氏はもっと強烈な例えをしています。「アーカイブ・ヘロイン」と。最初はコストが掛からないが一回始めたら最後,止められない。しかもこれは高価な習慣だと。これがほんの短期間に起こっている問題であり,最悪の場合,作品は忘却の彼方だと。

従来のフィルムなら良い環境にただ置いておけばよかったのです。しかも,フィルム作品であれば撮ったコマ数と作品になるコマ数との比率は10:1程度のものだったのが,デジタル作品では200:1にも及ぶのだそうです。ヘタをすると数年で消えてしまう作品が出るのではないかと言われています。幾つかの技術予測がありますが,悲観的な予測では,1990年代から2020年くらいまでの作品がすっぽり消えてしまうのではないかと見られているとの事です。
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コメント 4

lequiche

デジタルは砂上の楼閣、まさにその通りです。
ウチにはもう読み出せないMOとかLDがあります。
CDやDVDは比較的継続して供給されていますが、
それだってこの先、どうなるのかわかりません。
デジタルは、つまり金儲けっきり考えていない媒体です。

私は最近、CDと一緒にアナログ盤が出た場合、
重要な盤は両方購入するようにしています。
レコードプレーヤーの良いものを持っていないので
まだ踏ん切れないのですが、、
ゆくゆくはアナログ盤を主体にするつもりです。
アナクロですが一番安心できます。
by lequiche (2017-05-19 19:10) 

Enrique

lequicheさん,文化保存の救世主の様に現れて来たデジタル技術ですが,その技術進展はドッグイヤーとも言われる様に人間の営みを犬のそれにしてしまいました。デジタル技術そのものには責任は無いにしても,確かに一時の金儲けに使われている節はあります。新たなフォーマットを開発したならば,それに責任を持って一定期間保持し,都合でフォーマットを変えるならば,何らかの形で過去のデータとの互換性を保つ,少なくとも再生はできる様にすべきです。しかし法律ででも義務付けない限り,そうするよりも捨て去る方が儲かるというところがジレンマです。
映画の話に戻れば,デジタルで作った映画をフィルムに焼き直すのが一番確実の様です。おバカな話です。
レコードの世界でもCDとともにアナログ盤も出るという現象が起こっているのですね。
by Enrique (2017-05-20 06:51) 

アヨアン・イゴカー

>「アーカイブ・ヘロイン」
的確なたとえだと思います。技術の発展は素晴らしいことなのですが、発展した分だけ負担も雪だるま式に大きくなってゆきます。
但し、
>都合でフォーマットを変えるならば
のようなことがあれば、この雪だるま式の負担は不必要に膨れ上がってしまいますので、規制、方向性を全世界レベルで打ち出す必要があると思います。
by アヨアン・イゴカー (2017-05-21 22:25) 

Enrique

アヨアン・イゴカーさん,セルロイドフィルムで作られた時代の映画はかなりが消失(焼失)したそうで意図的に焼いたこともあったそうです。TV普及前は興行してしまえばフィルム保管はコストでしかなかった時代です。その後TVが出てきて,保存することも商業ベースに乗ったわけです。しかしデジタルの現在,保管は再び大いなるコストになってしまったのです。
商業ベースにのみ任せておけば文化的な価値の消失は避けられないでしょう。お金に替えられない価値をどう守るかが問われているのでしょう。
by Enrique (2017-05-22 06:04) 

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