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訳語に関して [雑感]

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「常動曲」を話題にしましたが,音楽用語の訳語は名訳が多いと言われます。
確かに,あまり使われませんが,円舞曲や奏鳴曲などは言い得て妙というところです。交声曲(カンタータ)も元の意味をよく捉えています。

音楽用語の「嬰」とか「変」とかはもともと邦楽にも使われていた用語を使ったものですし,無い言葉は漢語を使って翻訳したのでしょう。日本語で西洋音楽も出来るようになったのです。むろん漢字の本場中国では音楽用語全て漢字で表されました。

現在の中国語(繁体)では,嬰は「銳」,変は「扁」の様です。英語から直訳している様に見えますが日本語読みでの音が同じなのは偶然なのでしょうか。

理工学で出てくる「座標」とか,「位相」とか,「場・界」とかの恐ろしげな用語は,英語ならcoordinateとかphaseとかfieldです。「今日のコーディネイト素敵ね」とは言っても,格子模様の服でも来ていたら別ですが「今日の座標素敵ね」では日本語が通じません。だいたい「座標」なんて哲学用語です。「位相」にしてもそうです。「フェーズ」という方が現在割と使われるかもしれません。専門用語として意味が特定されている語はそのまま使うしかありません。

これらも中国語では,座標は「協調」,位相は単に「相」です。やはり英語からの翻訳の違いのようです。フィードバックとかストレスとか,システムとか,とうに横文字のまま使われています。それらをわざわざ,「帰還」とか「応力」とか「系」といった訳語を使っていたら却って分かり難くなります。

音楽用語には名訳が多いとの事でしたが,理工学語には迷訳があります。
その一つだと思うのが「行列」です。matrixの訳語です。matrixは縦横に数字を並べた記述法なわけですが,「行列」では数字を平面的に並べたイメージが湧きません。

とある方は「間取区数」が良いのではないかと,真面目とも冗談ともつかない事を仰っていました。
ともあれ,「行列」では行と列のイメージが全くつきません。行と列と言われても,縦成分のことなのか横成分のことなのか見分けられません。縦列とも横列とも言います。列は縦にも横にも成り得ます。

columnとrowならば,少なくともcolumnは柱のイメージで縦というのはピンとくるので,やはり,この辺は訳語の問題です。しかし,行と列が区別つかないと困ります。その覚え方は,漢字に注目して,行の亍の部分は横棒2本だから横,列の刂は縦棒2本だから縦と覚えるのだそうです。従って行がrowで列がcolumnというのが正解の様です。冷や汗が出てきます。

漢字は表意文字で絵文字でもありますので,右と左はイメージ湧きますが,英語のrightとleftはどっちがどっちか瞬時にはイメージ湧きませんので,ホーム側から見た野球スタジアムを思い浮かべる事にしています。ギターでは右手と左手の機能が全く異なるので,あまり無いですが,鍵盤ではたまにL.H.とかR.H.の表記が見られます。高音部側を左手で弾くとか,低音側を右手で弾くとかです。まあ。これはどっちがどっちと言うより,普段と逆をやるんだというイメージでしょうか。

数学の行列はマトリックスのままで,行はロウ,列はカラムの方が分かりやすいのですが,逆に分かりにくいカタカナ語も時々あります。一時期流行った,「コミット」なる言葉。「結果にコミットする」って,いったい何を言っているのかよく分かりません。commitを英英辞典で繰ってみますと,最初に,"to do something wrong or illegal"と出て来ます。これは間違った事や違法な事を「犯す」という意味です。2つ目も犯罪,3つ目は姦通,碌なものが出てきません。4つ目でようやく,"to say that someone will definitely do something or must do something",「間違いなく何かをしたり何かをしなければならないと言うこと」とあります。キリスト教の原罪とかに何か関係あるのでしょうか?

確かに義務とか使命とかの要素を帯びた仕事に関してcommitを使っているのを見たことがありますが,その言葉の成り立ち経緯も良く分からない言葉をビジネスシーンで多用する必要があったのでしょうか?カタカナ語の多用には注意しないといけません。分かったような積りにさせられるとか,大したことで無くてもすごい事の様に思わされるとか。

英語では分野により同じ単語でも様々な異なった意味に使われることが多いようです。一方,漢語は分野により様々な言葉を作り出すことができます。同じcoordinateにしても,理工学分野では「座標」ですが,中国語のように「協調」でも良いですし,等位,同格,同等,対等,整合,調整,調和,etc。こういう例はいくらでもあるでしょう。

一対一に対応するものは翻訳の問題は無さそうです。magnetic fieldは「磁界」ないし「磁場」ですが,ここで使われる「磁」は「慈母」の慈と同源と言われ,鉄が磁石に引き寄せられる様を,母にくっついて行く子供になぞらえているのだと言われます。magneticも「引かれる」の意味とattractive「惹かれる」の意味をも含む様です。この辺の感覚は洋の東西を問わず共通なでしょう。
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アヨアン・イゴカー

>「座標」とか,「位相」とか,「場・界」とかの恐ろしげな用語は,英語ならcoordinateとかphaseとかfieldです。
英語のcoordinateと言うのは、全くピンと来ないです。座標と言うのは名訳だと思います。中国語の「協調」と言うのは文字通り過ぎで、意味が分かりません。
と言いつつ、使い慣れてしまえば、不自然に聞こえたものでも自然に感じるものなのだろうと。日本語でも、単語の成り立ち、本来の意味を確認して使っていることの方が圧倒的に少ないと思われます。
by アヨアン・イゴカー (2018-02-25 15:09) 

Enrique

アヨアン・イゴカーさん,
訳語になってしまうとそれでしっくりしてしまって,元の語よりも強くなってしまうことも多いように思います。数学用語とかは特に限定した意味で使っているので一般語とは異なる様に感じます。
同じ語のまま使うか,分野ごとに訳語を変えるのか,翻訳の基本的課題でしょうか。
by Enrique (2018-02-26 08:19) 

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